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嫌々爺日記

日頃の愚痴か、エンタメ作品の感想か……

アンチ『スイーツ男子』

僕は甘いものが大好きだ。好きな食べ物は? の問いには決まって「寿司とパフェ」と答える。『NO SWEETS,NO LIFE』である。

 

高校一年生の頃、学校に馴染めず鬱屈としていた僕の数少ない癒しの一つが、放課後たまに喫茶店に寄って食べるパフェだった。

そんなある日、ストロベリーパフェを頬張っている僕の耳に、黄色い笑い声が聞こえてきた。声の方をちらと見やると、女子中学生か女子高校生の四人組が談笑していた。僕はパフェに視線を戻し、ウエハースをどのタイミングで食べるかに思考を巡らせていたのだが、ふと、「一人でパフェて……ww」という押し殺したような笑い声が聞こえてきた。彼女らにとっては小声のつもりだったのだろうが、その声はハッキリと聞こえてしまった。店内には僕とその四人組しかいない。聞き間違いでは恐らくないだろうから、彼女らが一人でパフェを食う僕を笑ったか、友達が殆どおらず一人でパフェを食う僕が被害妄想の幻聴を生み出したかのいずれかである。

前者ならば悲しいし、後者ならば恐ろしい。どちらにしろ最悪だと思いつつ、僕は極めてさりげなく、彼女らの方に目をやった。努めて自然に、何気なく。

「あ!ww こっち見た……www」

四人組の内の一人は確実にそう言うと、友達の肩に顔を埋めた。他の三人はテーブルに突っ伏し、肩を震わせていた。間も無く、「スイーツ男子やんwww」という震えた声が聞こえてきた。その言葉を咀嚼する暇もなく、ボトッ……と、何かが落ちる音がした。嫌な予感とともに視線をパフェに移すと、ストロベリーパフェの醍醐味である苺が、テーブルの上に落ちていた。目を離した隙にアイスが溶け、その上に鎮座していた苺が転がり落ちたのだろう。

 

何がスイーツ男子じゃボケェッ!

 

絶叫したかったが、絶叫したところで苺は戻って来ない。僕は無意味なことはしない主義なのだ。四人組の女の子達が可愛かったせいで気後れしてしまった訳では、断じてない。

 

男子がスイーツを食べて何が悪いのだ。何を笑われる筋合いがあるのだ。そもそも男というのは、結構スイーツが好きなものである。スイーツを食うことは、女性の特権では決してない。男がスイーツを愛することは何ら特別ではないのだ。「スイーツ男子」などという名称で呼ばれる覚えは全くない。

もしこれが逆ならばどうだろうか。我々男連中が、焼肉を愛する女性を「焼肉女子」と、牛丼を愛する女性を「牛丼女子」とわざわざ呼称した場合、恐らく「女が焼肉を食べて何が悪い!」と非難轟々だろう。

そうであるにもかかわらず、未だに「スイーツ男子」なる言葉が使用され続けているのには、理由がある。それは、スイーツ男子という「侮称」を受け入れている自称・スイーツ男子の存在である。この罪、万死に値する。

彼らエセスイーツ男子は、「スイーツ男子」と女性に呼ばれることを喜び腐っているのだ。こういう奴らは、女性から「〇〇くん、可愛いー!」と言われても鼻の下を伸ばしてヘラヘラするタイプである。あんなもの、本当に可愛いなどと思っている筈がない。「男子にも気軽に可愛いとか言えちゃうアタシ」アピールなのだ。「スイーツ男子」などと口にする女性もそれを受け入れる男連中も、全くもってアホンダラである。

 

……という話を以前、かなりの熱量で彼女にしたところ、「えーっ。でも、スイーツ男子って可愛いやん」という一言で片付けられてしまった。勿論僕は「いやいや、俺の話聞いてた? そういう女子の軽率な言葉がどれだけスイーツを愛する男子に居心地の悪い思いをさせてるかわかってるん?」などとは言わず、満面の笑みで「そっかあ。うん、せやんなあ」と答えたのであった。

恋はスイーツよりも甘いと思い知った瞬間である。