嫌々爺日記

日頃の愚痴か、エンタメ作品の感想か……

悪ふざけみたいな吹き替え

外国語映画を吹き替えで観るか字幕で観るか、というのはよく議論になる話である。だが、別に映画通ぶる訳でも選民意識を持っている訳でもないのだが、この議論をする人はハリウッド大作以外の映画をあまり観ない人ではなかろうかと、字幕派の僕は思う。というのも、字幕しか選択肢のない映画が世の中大勢存在するからである。フランス映画、インド映画、韓国映画、昔のアメリカ映画、サイレント映画……。こういった、字幕で見ざるを得ない映画も好んで観る人間は、必然的に字幕付きで映画を観る体質になってしまう。それゆえこの手の字幕派は、吹き替えがある映画でも、わざわざ吹き替えで観ようとは思わないのだ。

この事実に言及しないまま「字幕の利点」や「吹き替えの利点」を主張して議論する人は、字幕のない映画を観ない人なのだろう。

……まあそもそも、好きなスタイルで観ればいいだけの話なんですけどね。

 

さて僕の場合、小さい頃から金曜ロードショーなどで吹き替え映画をよく観ていたため、以前は吹き替えでも観られる体質だった。それが字幕派へと移っていったのは、前述の理由(=吹き替えが収録されていない映画を多く観るようになった)の他に、もう一つある。本稿のタイトルの通り、悪ふざけとしか思えない吹き替えが多過ぎるのだ。

日本には優れた声優が数多く存在するにもかかわらず、どういう訳か、配給会社はタレントや芸人や役者に吹き替えをやらせる。爆笑問題・田中など一部の例外を除き、ド素人が声優なんてできる訳ないのだ。そんなサルでも分かることが分からない、否、分かった上で(話題性と集客力のためか、芸能プロダクションの圧力のせいかは知らないが)やっている配給会社の愚劣っぷりは、万死に値する。

 

字幕界には戸田奈津子さんという悪の女帝がいらっしゃる。彼女は時折とんでもない誤訳・珍訳をやらかし、映画関係者や映画ファンからの大バッシングを幾度となく受けているにもかかわらず、そんな批判はどこ吹く風とばかりに悠然と字幕界に君臨し、トム・クルーズからお中元をもらったりしている。なぜ戸田奈津子さんがあれほど大物然としているのか、僕のような一般人には大いに疑問である。

しかしそれよりさらに疑問なのが、「吹き替えに悪ふざけとしか思えないド素人を起用する配給会社には、プロとしての矜持がないのか?」ということである。

戸田奈津子さんは、腐ってもプロの翻訳家として良し悪しを評価されている。だがド素人吹き替えの場合、それ以前の問題だ。全編ずっと誤訳みたいなものである。そんな連中に、よく吹き替えを依頼するものだ。

『プロメテウス』を観ようとして「字幕:戸田奈津子/吹き替え:剛力彩芽だったときの僕の気持ちを、お前ら配給会社は考えたことがあるのか! という話である。しかも、作品自体もハズレだったんだぞ! ……ってまあ、それは配給会社のせいではないが。

 

中でも最近僕が最も憤ったのは、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のBlu-ray版に収録された吹き替えである。これが、劇場公開時と全く同じだったのだ。すなわち、EXILEAKIRA竹内力真壁刀義……である。

1カット、1カットがまるで神話のような色彩を帯びている奇跡的傑作の吹き替えが、ド素人なのである。何とも許しがたい。日ハムのトレイ・ヒルマン監督だ。シンジラレナーイ。……つって、こんなつまらないことを言いたくなるほど、僕は心底腹が立った。

 

悪ふざけとしか思えない演技しかできないド素人に吹き替えをさせるくらいなら、一層のこと、もう思いっ切り、徹底的に悪ふざけをしてほしいものである。

EXILEAKIRAではなくボビー・オロゴン竹内力ではなく長州力真壁刀義ではなく天龍源一郎。……吹き替えなのに日本語の字幕が必要、という混沌たる惨劇を引き起こすのだ。

他にも『ダークナイト』のジョーカーを松野明美、『ホーム・アローン』の主人公を寺田心、『ターミネーター』のシュワちゃんをクロちゃん……なんて風にして、作品を台無しにすればいい。

さらに、映像自体にもCGで手を加えちゃおうではないか。

たとえば『ゴースト/ニューヨークの幻』でろくろを回す例の感動的なシーン。あのろくろを、CGで超高速回転させるとか。

びっくり系ホラーの洋画は全部、ワッ!という怖いシーンが来る五秒前からカウントダウンを表示するとか。

シリアスな映画で人が死ぬたびにテレッテ、テレッテテッ!というマリオが死んだ時の効果音を流すとか。

 

勿論こんな悪ふざけをすれば、版元や作品の熱烈なファンからは血反吐を吐くほどの抗議が殺到するだろう。だが、僕のようにゲラゲラと哄笑をあげながら割れんばかりの拍手を送るバカも、意外といるのではないでしょうか。

配給会社さん、今後は「 字幕、声優による吹き替え、悪ふざけ」の三種類を劇場上映、DVD収録してくれないだろうか。責任は僕が取ります。嘘です。